「生きている」その1 小川茂年氏

「食養の道」1979年10月号 月刊「生きている」よりおもいきった抜粋(文責 阿部一理)

生きている(1)

「よくみれば なづな花さく 垣根かな」芭蕉

人間を養う食物となる植物に、必要なミネラルを調整し供給してくれるのは

「土の中の微生物なのです」

この小さなものこそ、草のそして人間の親であることを知らないバカだけが、人間様だなんて威張って、戦争や公害や病気を作っているのです。

『生きている』とは、みんなが兄弟であり、世界は一つであり、宇宙そのものが生命であること、そして、それらが「私」である事を理解することなのです。

この理解が人間を健康に、社会を平和にし、自然と共にある豊かさを恢復(かいふく)することになるのです。

「生きている」ことは、個人と世界を生命の原則のままの姿に於て考え、行動し創造することなのです。

自然食について

自然食の基本は、食物が生命である。と言う考えから出発しています。

人間の食物の基本は「穀物」です。米、麦、粟、稗(ひえ)、黍(きび)等、「そば」「はとむぎ」や豆類も大切です。

その次が野菜と海藻です。

牛蒡、人参、蓮根、大根等の根ものは「根張り」と言うのでしょう!根気が付くのです。

海藻は、最もミネラルの多い海に生育しているので、素晴らしい調和と活性を身体に与えます。

伝統食品としての「梅干し」「沢庵」は、腸や胃の為に良いばかりでなく、神経をも強化します。

果物は考えている程栄養のあるものではありません。

「リンゴ」は腸によいし「蜜柑」は疲れをいやし「トマト」は油の消化を良くする等性質があります。

が余り沢山すすめることは出来ません。

噛むこと

日本人は、おそらく世界一のデンプンを摂る国民でした。

デンプンは、植物の葉で光合成によって出来ると教わりました。

光がつくりだした最初の栄養素でしょう。

太陽が生命の根源ならデンプンは栄養の基本ではないでしょうか!!!

デンプンは唾液によって消化されます。

ここに生きる事の始まりがあります。

口で最初に噛むことは、「植物の陰」を「人間の陽」に変化するために、より陰にしようとするのです。

「かむ」を漢字に当てはめると上、神、家務、擤、噛、嚼、咬、醸があります。

「かみわける」「かみしめる」と言う言葉があります。

「かむ」とは、上歯と下歯を動き合わせる事によって、食物を細分し変化させます。つまり上に下を合わせる事が、食事の生命運動への始めなのです。

※上の象徴としては、親、社会そして自然であり環境であります。

「神」とは、宇宙生成の進化が口を通して行われてきたことを示しています。

口と言う場所は、宇宙の歴史が人間に変化する素材としての食物の転換工場の入り口です。

「家務」とは、「家」は寝床と爐辺。つまり性と食の表現です。

この二つを「家務」としたとことに、何も言えないユーモアが感じられるのでしょう。

「噛む」」と「醸む」は、噛むが「かみわける」食物を細かく分解すること、醸むが「かみしめる」食物を変化させ血や肉にし人を造る、に対応しています。

生きている(2)

「生きている」とは、血液が体内を流れていることです。

この血液は葉緑素の変化です。

葉緑素は植物によってつくられ、植物は大地の産物です。

「生きている」は、二つの構造をもちます。環境と我です。

「生かされている私」と「生きる私」です。

「生かされている私」の世界は、不思議さに満ちています。

誕生の時、土地や国、父母を選ぶことは出来ません。

運命のままに生まれてきたのです。無意識の世界です。

まったくの受け身です。

「生きる」は、「生かさせれる」から分化したのです。

「生きる」とは、自律であり決断をもち自己に誠実で、

常に未来から挑戦を強いられている自由な判断であって孤独なものです。

この孤独を超えるところに「生きる」があります。

そして「生きる」はついに、「生かされている生命」に到達するのです。

自然食について(2)

「タンポポ」は、早春から初夏にかけての「野草の王様」です。

葉は、健胃剤とし、浄血、解熱、発汗にも効果があります。母乳が良く出るようになります。

根はキンピラにすると美味しく、根を煮詰めたエキスはコーヒーの代用として健康食です。

酸性地の日本では、健康を維持していく為の血液を弱アルカリ化にする習慣をいろいろと持っています。

梅干しやお茶を「毒消し」と呼んだり、一日、十五日にお赤飯を食べたり、春になると七草粥、よもぎ団子や餅をつくり、せり、なづな、タケノコ、つくし、いだどり、明日葉、蕗等を食膳に供し旬を大事にしました。

トロロ汁にする「山芋」は、栽培方法で生命力や質や栄養も違うのです。

栽培法によって植物の強弱がきまり、弱ければ自然淘汰の法則によってダメになりますが、農薬だけによってカバーし、その行き過ぎと常識化が現代の文明病としての食品公害を生みだすようになります。

「農」こそ、自然にとっても人間にとっても重要で偉大な仕事です。

「水、藻、草、肉、果物、穀類」と食物は変化してきました。

水と穀類の結びこそが、最も広く健康の意味を持っている事は非常に興味あるものです。

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