「塩」は命のエキスの結晶!!

塩は海からできます。現在山から掘り出している岩塩も昔の海が結晶したものです。その海のミネラルバランスをつくったのは、生き物、主に植物です。植物というのは、光合成をする生物という意味で、藻類も入ります。それではこの地球の海に塩が出来ていった長い過程をたどってみましょう。

地球は、水が液体で存在できる温度であったために水の星になりました。水にはその中にミネラルを溶かし込む性質があります。初期の地球は、窒素ガス、炭酸ガス、青酸ガスなどに覆われていて、岩の陸地と強酸性の海であったようです。

その酸の海を一変させたことがありました。それが酸素の出現です。酸素は藍藻というカビのような原生生物が光合成を発明したことで発生しました。光合成とは、水を光で酸素と水素に分解し、その水素エネルギーを使って、水と炭酸ガスからでんぷんをつくる営みです。その過程で生まれてきた副産物が酸素です。酸素は海の中に溶けていた金属元素と結びついて酸化させ、固定化して海の底に沈め、海の水を真水に近くしました。

光合成は46億年の地球の歴史の中で最大の発明です。何故かというと、それまでの生物は地球上の物質だけを使って細々と生きてきたのです。そのスピードは例えて言えば、1億年かけて原始細胞1つが2つに細胞分裂するというようにです。ところが、光合成は、地球の外からやってくる太陽エネルギーを使ってでんぷんという生物の体をつくることができるようになりました。今でも地球上の全ての生命は、皆このでんぷんという栄養によって生きています。でんぷんはたくさんの生き物の体を作りました。草や木や森、それが地下にストックされた石炭や石油。それが現在まで続く全ての地球の富の蓄積の始まりです。

しかし、当時の地球の生き物たちにとって、酸素は猛毒でほとんどが焼け死んでしまうほどの大変な環境破壊でした。この環境に適応して進化して生まれてきたのが、好氣性菌、つまり酸素を吸ってでんぷんを燃やして生きるエネルギーにし、炭酸ガスを出すことに成功した生物で、私たち動物の先祖です。この呼吸の営みは光合成の逆のシステムで、これも光合成に劣らないほどの大変な発明なのです。

空氣中では、たくさんの酸素がオゾン層をつくりました。そのオゾン層は、有害な紫外線から生命を守るフィルターとなり。生命が海から上陸するのを可能にしました。初めに上陸したのは藻類だと考えられています。これが植物へと進化していき、草や木が生えては枯れ、ミミズや菌に分解されて100年に1センチのペースで土が出来ていきました。

植物はその根から根酸をだして岩石を溶かしていろいろな元素を集めたり、水や空氣中の元素を使ってさまざまに組み合わせ、いろいろな物質をつくることができます。特に陸上に上がって一番必要だったのは重力に耐えるしっかりとした細胞膜を作るためのカルシウムでした。そこで植物は、カルシウムを作る能力を身に付けました。

このように、酸素も、オゾン層も、カルシウムも、土も、生命に取って必要な要素はみんな植物が作ってきました。最後に、地球を循環する水が、太陽の熱で海から蒸散して大地に降り注ぎ、その要素全部を溶かしこみ海に溜めていきました。ですから海には生命誕生から進化の過程に関わった全ての元素があるはずなのです。こうして海のミネラルバランスがつくられていきました。つまり、海の水は地球の命のエキスであり、塩はその結晶なのです。

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