世界中が注目している健康な食生活の基本は『和食』にありと言われて 久しい
1977年 アメリカの上院栄養問題特別委員会(委員長のジョージ・マグカバンの” M”を取って M 委員会)のマクガバンレポート(約 5000ページ)は、日本語に訳した 今村光一氏の付けた題は『今の食生活では早死にする』というものでした。
その中で、敢えて理想的な食生活は『元禄以前の日本の食生活』である。と断言されたのです。動物性たんばく質 特に獣肉・鶏肉の取りすぎ、動物性脂肪の過多、農薬汚染、食品添加物の害、白砂糖の過剰摂取、牛乳の害などなど・・・が発信されたのでした。
医学が発達したら病人は減るハズなのに三大成人病は増加の一途をたどるのは何故か?などの疑問から当時は 150億円という予算をかけて世界の健康情報を集めたものでした。
後に 2009年『葬られた第二のマクガバン報告』副題『動物タンパク神話の崩壊とチャイナ・プロジェクト』では、動物性食品の過剰摂取がガンの強力な要因となっている(キャンベル博士)という説を証明した事になったのです。
ただしこの報告書からは スッポリ抜け落ちたトランス脂肪酸を含む油の問題と塩の摂取については後に詳しく述べます。
食用になる油
油(脂肪酸)には2種類あって 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸です。その名の通り飽和状態即ち 満席状態から付いた名前です。
脂肪酸は炭素( C)が連なった形状で、その炭素が4本の腕を持っていて、その内の2本は隣の炭素と手を結び 他の2本には水素( H)が付きます。その水素( H)の付き方が満席か または一部が空席の状態により 飽和または不飽和と呼んでいるのです。
そして1個だけ空席な形のものを 一価不飽和脂肪酸と呼び複数空席な形のものを 多価不飽和脂肪酸と呼んでいるのです。その空席の順番が端から数えると3番目を オメガ3 6番目を オメガ6 9番目を オメガ9 と呼びます。
オメガ3の油とオメガ6の油は、生理的に正反対の働きをしますので、両方ともに必要なのですがオメガ3の油が圧倒的に不足するような食生活の環境になっているのが現代社会の実態です。理想的には、オメガ3:オメガ6=1:1です。譲っても オメガ3:オメガ6=1:4くらいまでです。現代人の多くは 1:10 または 1:50 ファーストフード・コンビニ弁当で生活しているような方は 1:100くらいの比率に崩れていると言われています。
伝統的な和食の特徴の1つは、この脂肪酸の摂取の比率が1:4くらいになっているます。ところが 日本では世界の研究に逆行するようにやたらとオメガ6のリノール酸を摂取するように推奨された経緯があります。
リノール酸は血中のコレステロールを低下させる作用があるとして植物油の中でも、ベニバナ油(サフラワー油)やコーン油が大ブームになってしまったのでした。往時の厚生省や食品業界は『動物性の脂はコレステロール値を上げるが、植物性のリノール酸は下げるので身体に良い』と大々的に宣伝しました。
そしてマーガリンをはじめ マヨネーズ、サラダ・ドレッシングのような『高リノール酸食品』が家庭や学校給食で大量に使われることになってしまったのでした。『バターよりマーガリン』という間違った栄養学が常識とされた時代がずうっと続きこの40年間で日本のリノール酸摂取量はなんと3倍以上に増加しました。
リノール酸の過剰摂取は脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めたり、促進させることになり、ガン細胞の増殖を促してしまうとも言われて来ました。ガンも一種の炎症であると最近言われ出しております。
さらに、アトピー性皮膚炎や乾癬なども現代人のリノール酸過多の食事によって『オメガ6体質』になって高炎症体質になっているとも考えられます。結論として、魚に豊富に含まれているオメガ3の脂肪酸である DHAやEPA を摂取したり、フラックスオイル(亜麻仁油)・シソ油・ヘンプオイル(麻の油)などを積極的に取って欲しいものです。その時にオメガ6を減らさないと全体的に『油の取りすぎ』になってしまいますので要注意です。
人間の身体の組織は大まかに言って 水 60% タンパク質(アミノ酸)20% 油 20%と言われています。意外に油のパーセンテージが高いのに驚かされます。中でも脳は 60%が油です。しかも 20%はオメガ3の油が必要と言われています。油の質は先ず脳に影響を与え さらに細胞膜が脂肪酸でつくられていますので細胞の一つ一つに重大な影響があります。
より健康な食生活を追求する中で油の問題が非常に難解で、かつ最重要課題と言っても良いくらいです。 …悪名高き『トランス脂肪酸』とは、一言でいうと『殺人脂肪酸:killer oil』といってもいいものです。
『トランス』とは移動するという意味で、危ないということが伝わって来ないのです。100歩譲っても『不自然脂肪酸』とか『危険な脂肪酸』と命名すべきだったと思います。
今から40年以上も昔にアメリカのある自然派運動家の一人がお客様の一人から「マーガリンを顕微鏡で覗いてみると プラスチックに酷似している。これは食べ物とはいえないかも」と言われました。
材料は植物性の油なのだからそんなハズはなかろう、と安全確認の為に自分で簡単な実験を試してみました。裏窓の外にマーガリンを置いたのです。虫に喰われたり小動物に喰われたりカビがはえたりした姿を想像しなから見守ったそうです。
ナ・ナ・ナント この塊は 2年経ても もとのままであり続けたと言うのです。『危険な油が病気を起こしている』( J・フィネガン著 今村光一訳 中央アート出版刊)
ただ古く汚なくなっただけであった。ぞっとして実験はここで止めにしたというのでした。マーガリンは食べ物ではなく 食べられる形をしたプラスチックなのだと結論づけています。1960年代の話です。マーガリンのほかに、洋菓子の多くに使われているショートニング、ミルクではないのに色だけ似ているコーヒーに添えたものなどトランス脂肪酸は身の回りに非常に多く見られます。
日本ではコンビニの食材やファーストフードの店の多くが未だにトランス脂肪酸を常用してます。特に西欧の自然食の関係者は
日本人のトランス脂肪酸に対する意識の低さにビックリされます。今でも自然食品店の棚にマーガリンがならびショートニングやマーガリンの入ったパンやケーキが売られている事に腰を抜かさんばかりに驚かれます。
以前にもお話しましたが 油は簡単に言いますと炭素(C)が連なってそこに水素(H)がくっついて存在します。炭素は4本の腕を持っていて 2本の腕は隣同士の炭素(C)と手を結びます。-C-C-C-C-C-残りの上と下の2本の腕に水素(H)がくっつきます。水素は非常にくっつきやすい性質を持っています。
余談ですが、すぐに女性にさわりたがる男のことを水素(H)みたいだ !! お前はH(エッチ:水素)みたいだ !!というのが“エッチ”の言葉の始まりで最初東京大学の学生の間で広まった と聞いたことがあります。
さて 炭素(C)に 水素(H)が満席状態に全てくっついているのを飽和脂肪酸(飽和状態の意味)と呼び空席があるのを不飽和脂肪酸と呼びます。炭素(C)の下側の腕に水素(H)がつき 上側の腕のところが空席の状態のところへ水素(H)を添加すると下側にくっついていた水素(H)が反対の方向に移動(トランス)します。この移動したものが自然界に存在しませんので体内では分解されにくく さまざまな悪影響が出てしまうのです。
移動する前には 水素(H)は下側すなわち 同じ側にあるのでラテン語で「同じ側」を意味する 「シス」という言葉を使って「シス型脂肪酸」と呼びます。その同じ側から反対側に 移動(トランス)しますので「トランス脂肪酸」と呼んでいるのです。不自然なものが身体の中に入る訳ですから分解代謝に時間がかかり大量のミネラルやビタミンを消耗することになり私たちの身体に不必要な負担を強いることになり殊に細胞膜や血管や脳のように良質の油が必要な部分がダメージをうけてしまう事になります。
脳はその約 60%が脂質です。「悪い油」と「活性酸素」が病気の2大原因と言っても過言ではないと私 阿部一理は強調しておきたいと思っております。