農業(アグルカルチャー)と、生態学(エコロジー)を組み合わせた造語の『アグロエコロジー』の紹介が、昨年末12月25日、中日新聞の社説でした。
農業ほど大切な仕事はありません。太陽も空気も水も自然にあります。でも農産物は作る必要があります。地球の人口は約80憶人。今でも増え続けています。
食糧危機を叫ぶ声が昨今大きくなっています。自給率38%(これでもかなり楽観的な数字です)の我が国は危うい限りです。
タネが、慣行農法(従来の化学農法)が、食べ物等々、問題が山積しております。
そんな中で『最高のクリスマスプレゼント』の記事でした。
かすかな希望の灯がともされたと思いました。
◆◇◆社説◆◇◆
『アグロエコロジーの光』
***(前略)***
・生態系バランス崩さぬ農業
津市美杉町の高原で自然農園を営む村上真平(しんぺい)さん(63)の畑には、農薬も、化学肥料も、機械もありません。農薬や化学肥料を使えばアオムシだけではなく、クモも死に、土中の微生物も減ってしまう。だから村上さんはアオムシを見つけてもほうっておきます。食物連鎖という生態系のバランスがきちんと保たれていれば、アオムシにかじられてもキャベツ全体の5%ほど。出荷になんの問題もないと言います。
村上さんは福島県の農家に生まれました。有機農法の普及で知られる愛農学園農業高校(三重県伊賀市)で学んだ後、インドやバングラデッシュ、タイで十年余、有機農法を指導しました。現在は母校に近い津市美杉町の高原で、季節に合わせてナスやキュウリ、スイカなど五十種類ほどの野菜や果物を育て、生活の糧としています。
村上さんのように自然と調和した農法をアグロエコロジーと呼びます。アグリカルチャー(農業)とエコロジー(生態学)を組み合わせた造語で、有機農業や、家族で営むような小規模農業に加え、地産地消の暮らし。循環型の経済システムなども指します。
・国連「家族農業の10年」
日本ではあまり知られていませんが、国連は2019年~28年を「家族農業の10年」と定めています。持続可能な開発目標(SDGs)を達成するためにはアグロエコロジーの担い手である小規模な農業、林業、漁業、畜産こそがあるべき姿だと言うのです。
なにやら奇異にも聞こえませんか。日本では、家族農業は非効率だ、いずれなくなると言われてきたのですから。わが国は戦後、集約化や法人化、モノカルチャー(単一栽培)化など、農業の「工業化」を推し進めてきました。米国流と言いましょうか、農薬や化学肥料、大型機械を使い、広大な土地で単一の作物を大量生産することが世界の食料不足を解決する道だと信じられてきたのです。
***(中略)***
紹介が遅れましたが、村上さんは、国連の「家族農業の10年」に賛同する団体や研究者らでつくる「家族農林業プラットフォーム・ジャパン」の代表者です。そして、東日本大震災で故郷を奪われた一人でもあります。
津市美杉町に来る前の話です。タイから帰国した02年、実家に近い福島県飯舘村の荒れた地に入植しました。10年近くかけ、自然農園や農家レストラン、バンガローやパン工房を整え、理想の「エコビレッジ」は完成しつつありました。さあ、これからという11年春のことです。福島第一原発事故で全てを失いました。
母校を頼って避難し、津市美杉町の高原で1.6ヘクタールの耕作放棄地を借りました。自力で切り開き、妻と四人の子ども、「自然を収奪しない農業」を学ぼうとする若者たちと、再び、エコビレッジづくりに挑んでいます。そのたくましさ、強さに、アグロエコロジーの光を見る気がします。
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阿部一理 記
今回、村上真平さんのホームページにたどり着きました。
先ずは新年早々 お電話でご挨拶させて頂きました。一度お伺いすることをお約束し、今回の掲載に村上さんのホームページを活用させていただくことも快く認めてくださりました。
後日村上さんにつきましては、たっぷりご紹介させて頂きます。村上さんの活動の一部が2020.11.26参議院:農林水産委員会での『種苗法改正』の折り、参考人としての話を是非ご覧頂きたいと思います。下記から見る事が出来ます。
★村上真平さん「農家がタネを採る大切さ」、紙智子議員「農家と育成者の共存」(約35分)
★村上ご夫妻のお店のホームページ「自然食店:なな色の空」
http://www.nanaironosora.sakura.ne.jp/
と、ここで締めようと思っていたところ、次の書籍に出会って一刻でも早く手に取って欲しいので、チョットだけご紹介致します。
国際ジャーナリスト堤未果さんの最新書籍『ルポ 食が壊れる』(文春新書、2022.12.20初版、本体900円、税別)の281ページ 以下をご紹介致します。
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◆もう一つの静かな革命〈アグロエコロジー〉
2006年、前述したゲイツ財団率いるAGRAプロジェクトがアフリカで開始されたというニュースが華やかに報道されていたその陰で、エセックス大学の環境・社会学者ジュールズ・プレティ博士の研究班がひっそりとある発表を行っていた。
遺伝子組み換え技術と化学肥料を使うAGRA計画とは真逆の〈アグロエコロジー〉に基づく再生農法によって、土地の生産性を平均8割上昇させたという、驚きの成功報告だ。
プレティ博士たちは、世界57ケ国286地域の農場126万ケ所(合計3700万ヘクタール)での実践を比較研究し、その生産性が決して近代農法に劣らないことを証明した。
化学薬品を使わず、自然な生態系に沿ったこの農法で、土壌微生物が炭素を土中に固定する力が回復し、温室効果ガスも抑制される。
機械化された大規模農法と違い、人の手を必要とするため、地域での雇用を生み出し、人とのつながりを育て、コミュニティの生活向上にも貢献することが明らかにされた。
それらは今までのように、農業というものを、単に〈経済性〉だけで判断していては決して見えてこない、農がもたらす多面的機能の数々だ。
2013年。
FAOは2億人の農民が所属する世界最大の農民運動団体ビア・カンペシーナと提携し、〈アグロエコロジー推進〉を決定、2014年を〈国際家族農業年〉と定め、小規模家族農業を尊重してゆく方針を固めた。