まちがいだらけの日本の認知症治療 その2

コウノメソッドは、認知症患者さんの周辺症状を治すこと、つまりご家族が困っている症状を治すことを治療の主眼に置いています。

暴れていて大騒ぎになっているなら、もとの穏やかな性格に戻す。徘徊で困っているなら、しないように落ち着かせる。食事を食べないなら、食べれらるようにする。歩行が悪くなって転倒が心配なら、しっかり歩けるようにする。記憶障害などの中核症状は、回復させるとしても限界があるので、現状ではまず周辺症状をしっかり抑えることが重要になっているわけです。そのために、コウノメソッドはどのような方法を取るのでしょうか?

[junkie-hightlights color=”green”]簡単に言えば「バランスを取る」ということです。熱すぎるお湯は、冷たい水を入れればちょうど良くなります。冷たすぎる水は、逆にお湯を足せば良いのです。[/junkie-hightlights]周辺症状には興奮して暴れたり徘徊したいする陽性症状と、無表情で黙って落ち込んで食事も取らない陰性症状があります。これを見分けるには、ご家庭が何に困っているのかを聞けばすぐにわかります。そこに対処していきます。

P88

河野先生は教科書にも薬剤の説明書にも書かれていない「ナマの証拠」を患者さんから得て、それに基づいてコウノメソッドという薬物療法マニュアルをつくったのです。

医学界において、自身が積み上げた治療ノウハウのすべてを一般公開するというのは極めて異例なことです。河野先生はいつも、こう言います。「僕の治療はすべて患者さんに教わったこと。それぞれの患者さんが、こうするといいよ、これは要注意だよ、と教えてくれたんよ。僕はそれをまとめただけ」これはまさに、経験によって確立されたものだから科学的エビデンスはないけれども間違いなく効果はあるという、漢方薬の世界そのものと言えるでしょう。

[junkie-hightlights color=”green”]コウノメソッドを「エビデンスのない医療」と切り捨てる人がいますが、それはおそらく患者さんよりも科学のほうが重要と考えている人たちなのだと思います。言い換えれば、一人ひとりの患者さんを診ようとする医師でなければコウノメソッドに興味を示すことはないし、実践医になろうとも思わない、ということです。大切なのは患者なのか、権威なのか、あるいはほかの何かなのか、ということが問われているのだと思います。[/junkie-hightlights]

P90

『Think Different』

[junkie-hightlights color=”green”]僕が人生のお手本としているスティーブ・ジョブズ氏の名言です。僕は、この言葉を「発想を変える」「ものの見方を変える」「固定観念をとっぱらい新たな発想でまだみぬ医療をしてみる」「たとえ批判されても人と違うよう考えて世の中を前進させる」と解釈しています。

僕は医師を含めて医療従事者にこの『Think Different』が欠けていると感じています。患者さんやご家族を理解して、このケースでは何が必要なのかという答えを絞り出し、迅速にその対処ができるという「考える力」です。これは在宅医に求められる能力でもあります。そこにマニュアルというものなどありません。教科書はないし、大学の教授も教えてくれないものです。[/junkie-hightlights]

(中略)

今の医師は、あるいは医療従事者というのは、そのための努力を怠っているのではないでしょうか?試験に合格し、マニュアルを覚えて、それを患者さんに当てはめればそれでよい。その結果が現在の認知症医療に、色濃く表れているわけです。僕自身もそうだった、というのが本書のタイトルであるわけです。

P210

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