2022年11月20日(日)の中日新聞図鑑日曜版に大きく『行き過ぎた輸入依存・揺らぐ日本の食』の特集として、「ロシアによるウクライナ侵攻・新型コロナ禍、人口増加による食料需要の増大・・・。多くの食料や化学肥料、家畜の飼料などを輸入に依存する日本は現在、大量の食品の値上げを余儀なくされています。先進国の中で最も低い食料自給率の日本で行き過ぎた輸入依存体質をどう変えていければいいのか。さまざまな角度から図解します。」とあります。
中でも鈴木宣弘氏(東京大学大学院教授)の「農の危機は国民の食と命の危機」の小論文は衝撃です。
以下に全文を転載してみます。
************
日本の食料自給率は38%で先進国最低水準だが、本当はもっと低い、飼料以外の生産資材の自給率が考慮されていないからだ。新たにクローズアップされた問題は種と肥料。75%という野菜の自給率は、種の自給率が10%しかないので、種が止まってしまったら約8%になってしまう。
さらに、ほぼ100%を輸入に頼る化学肥料の原料が、中国の輸出抑制に加え、ウクライナ侵攻でロシアとベラルーシが「敵国」日本に輸出してくれなくなって今後の国内農家への肥料供給の見通しが立たなくなってきている。
公共種苗を民間譲渡していく制度改定によって、コメの種の自給率も野菜と同じ10%まで低下するという最悪の事態を想定した場合には、野菜の8%のみならず、コメの実質自給率も10%になると筆者は試算した。
さらに、この試算に化学肥料がほぼ100%海外依存であることを考慮すると、化学肥料がないと慣行栽培なら収量はほぼ半減するから、コメや野菜の実質自給率は数%という数字も出てくる。物流が停止してしまったときの我々の命の脆弱(ぜいじゃく)性を今こそ認識する必要がある。
そのリスクを裏付けるデータが最近、海外の大学からも出された。米国ラトガース大学の研究者らが、局地的な核戦争が勃発した場合、直接的な被爆による死者は2700万人だが、「核の冬」による食料生産の減少と物流停止による2年後の餓死者は、食料自給率の低い日本に集中し、世界全体で2億5500万人の餓死者の約3割の7200万人が日本の餓死者(日本人口の6割)と推定した。筆者が警鐘を鳴らしていた意味が如実に試算されている。
「お金を出せば輸入できる」ことを前提にした食料安全保障は通用しないことが明白になった。しかし、輸入小麦が値上がりすれば食パン価格は上がるのに、肥料、飼料、燃料などの生産資材コストが急騰しても、農家の国産農産物の販売価格は低迷したまま、農家の赤字が膨らみ、多くの農家が倒産しかねない、このまま日本の農家が疲弊していき、本当に食料輸入が途絶したら国民は食べるものがなくなる。
国内農業こそが希望の光である。国民も農家とともに生産に参画し、食べて、未来につなげよう。政府も事態の本質を見極めて、的外れな輸出振興の掛け声でなく、生産資材の暴騰で困窮が深まる農家への抜本的な緊急支援をすべきある。
***********
そこで新聞の資料を拾い上げて、現状と対策を少し述べてみたいと思います。
化学肥料は、ほぼ全量が外国頼みです。さらに日本は2020年度、有機農業の取り組み面積が0.6%に過ぎず、ほとんどの農家が化学肥料を使っているのが現状です。
そこで、国内が極力自給する体制づくりが急務となっています。
『循環型農業』で地域の資源の最大限活用を、と題して、千葉県いずみ市の矢澤喜久雄さんの「水田農家と酪農家をつなぎ、地域の循環型農業振興の例(5軒の畜産農家と30軒の米などの耕種農家が参加)を取り上げています。
自然農法家の花岡昭治先生、長谷川豊先生と一緒に2年前北海道で成功している、畜産農家と水田・野菜農家の連携を見てまわったことを思い出します。特別な土壌菌のエサを使ってお互いに補完し合う農業なのですが、それはそれはスバラシイ1つの理想型循環農法が完成しておりました。
「楽」で「病気に強く」て、「冷害」にも強く、美味しいものが量産出来、近隣の臭い苦情もなく、まさに良いことづくめの酪農家と農家さんたちの共存共栄農法の未来像が日本のあちこちで花開いているのです。他にも良い農法が各地にあります。
要するに、やる気になるかどうかです。
次に品目別の自給率をみてみますと2021年度で
コメ98%、野菜75%、大豆26%、小麦17%、魚介類53%、油脂類3%です。
ただし、野菜の種子の約9割が海外からの輸入です。米国・チリ・イタリアの3ケ国で半分強を占めています。コメを玄米で食べる食習慣(24時間浸水して、発芽毒を消して食べる)にするだけでも最悪食糧難から生き延びる強力な武器を入手したことになります。
コ(粉)とメ(芽)を食べるから「コメ」なのです。白米は、コ(粉)だけなのです。この話は別項で・・・。
とにかく薄氷の上にある食料自給率「38%」は大問題です。
食料不足対策を真剣に考えている人が最近周りに目立って増えて来ております。緊急の課題に全国民で取り組む大運動を起こしたいものです。
江戸時代の医学者安藤昌益の
『耕さざるもの、食うべからず』を肝に銘じたいものです。