「森下自然医学」2006年12月号に『命を支えるもの』★命の星・地球の視点で塩をみる 中村陽子さん★の内容をご紹介致します。
一読してその卓見に驚愕。ナント10年以上の前から、地球環境の破壊のどんどん進み、人間の身体にも多くの狂いが生じていました。その人間を含む動物の生命が、植物によって支えられているという状況に気づいていないことに残念さを感じます。
塩なしでは生きられない。
このように植物は自ら必要なミネラルをつくることができますが、私たち動物は、塩なしには生きられません。『塩戦記』という第二次世界大戦の東ニューギニアで、後方補給を断たれた師団の軍医さんの手記があります。それよると、粉みそ、粉醤油、塩という兵糧がなくなると体液がつくれないため、食べても戻し、全ての機能が衰弱し戦列から落伍して、涙も出ずに死んでいくしかなかったそうです。また、塩というのは、体力や精神力に大きな影響を与えるため、人間を制御管理するのに使われてきました。特に戦時には、塩を食べた軍隊は強くなり戦争に勝ち、また戦争が終わって占領地の治安を守るときは、塩を減らして兵隊をおとなしくさせたといわれています。
塩は、人間にとって、内なる海である体液をつくるのに欠かすことのできない材料です。単なる栄養素のひとつではありません。人間の体内で、食べたものが36~37℃の低温で燃えて熱量に変わるのは酸素のおかげで、1つの生体反応に付き、1つの酵素が働いています。体内の数千の酵素を動かしているのが、微量元素だといわれています。ですからどんなに微量でもなくてはならない元素であり、それはまだ人間の科学で解明されておらず、わかっている部分だけを頼りに、マンガンが足りないからマンガンだけ、亜鉛が足りないから亜鉛だけ、というような摂り方をしても無駄だということです。
体内にある「内なる海」
地球を循環する水により、全ての要素が溶かし込まれている海の水は少しずつ濃くなっています。その過程の中で、海の水の塩分濃度が、0.85~0.88%、ちょうど母親の羊水と同じ頃に、人間の先祖が現れてきたといわれています。そして人間は、その時の海を血液などの体液という形にして常に内なる海として体内に抱えて、陸の生活をしているのです。体液の中でも最高のものはやはり羊水でしょう。人間の受精卵は、羊水の中の10ケ月間に数十億年の進化をたどります。
その羊水を初めとした人間の体液のミネラルバランスが狂ってくると、健康を維持するのが難しくなってきます。現代人のミネラルバランスが狂ってきている大きな原因は、ほとんどの日本人が摂っている塩が過度に精製された塩化ナトリウムが99.6%以上の塩であるということと、添加物の塩をたくさん摂っていることです。添加物の塩とは、例えば、加工食品の原材料のところに書かれていえるアミノ酸とはグルタミン酸ナトリウムのこと、酸化防止剤とかビタミンCと書かれているのは、アスコルビン酸ナトリウムのこと、発色剤は亜硝酸塩、リン酸塩というように、ほとんどの添加物はナトリウム=塩です。これは体液を作る良い材料にはなりえないばかりでなく、体内で分解される時、カルシウムなどのミネラルを使ってしまい、バランスをさらに崩す原因になります。これは摂ってはいけない悪い塩です。
それでは、体液をつくる良い材料になる塩は、どんなものでしょう。それは、命を動かす全ての元素が体液に近いミネラルバランスで入っている塩ということになります。その塩の理想的な摂取の方法は、塩そのもので摂るよりたくさんの有機物や酵素や菌の体を通ったもの、醸造発酵してつくる味噌や醤油、自然海塩でつくった梅干しや沢庵や漬け物などがいいのです。料理に使う塩も自然海塩がいいのですが、そのまま直に振りかけて摂る時は、良く炒ったものがいいのです。
冒頭でも述べたように、地球の土や水、空氣のミネラルバランスが地球の生態系を決定しているように、体液のミネラルバランスが、体内で働く酵素や菌の種類や数を決定しています。ですから、内なる海は数々の悪条件に適応してきた物凄い生命力を発揮する力を持っているので、人間はかなり厳しい環境の中でも健康に生きられるし、多くの病氣から立ち直ることができるのです。